20年間で2倍以上! 花粉症急増の理由
今や“国民病”ともいわれるようになった花粉症。環境省の花粉症マニュアル*¹によると、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象にした全国調査では、1998年には19.6%だった花粉症の有病率は2008年には29.8%、さらに2019年には42.5%と、およそ20年間で2倍以上に。東京都では30年間でなんと約5倍とも。
また、ロート製薬が実施した「子どもの花粉症」に関するアンケート調査*²によると、子ども(0歳~16歳)を持つ親の約4割が、自分の子どもは「花粉症と診断された」または「花粉症だと思う」と回答。小学生では約半数(47.4%)が花粉症を実感しており、発症年齢は平均5.8歳。およそ4人にひとりが「目のかゆみで勉強に集中できない」など答えている一方で、約3割の親は「子どもの花粉症対策をしていない」ことも明らかになりました。
花粉症患者が増加している要因として、飛散する花粉数の増加、食生活の変化、腸内細菌の変化や感染症の減少などが指摘されている他、大気汚染や喫煙、ストレスの影響、都市部における空気の乾燥、さらに春先の黄砂やPM2.5なども花粉症患者の増加や症状の悪化に影響していると注意を呼びかけられています。
花粉症になる原因とメカニズム
そもそも花粉症とは、くしゃみや鼻水、目のかゆみや涙目など、いずれも入ってきた花粉を取り除こうとすることで生じるアレルギー反応です。
人の鼻では花粉が目や鼻から入ってきて、体内の免疫システムによって「異物=敵」とみなされると、敵に対抗するための抗体がつくられます。この抗体は「IgE抗体」と呼ばれるもので、花粉によって異なった抗体が作られます。IgE抗体は、花粉に接触するたびにつくられるため、少しずつ体内に蓄積されていきます。
蓄積量があるレベルに達すると、次に花粉が入ってきたときに、アレルギー反応を起こすヒスタミンなどの化学物質が分泌され、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった花粉症の症状を起こすのです。
「去年までは全然大丈夫だったのに急に花粉症になった――。」なんて聞いたことがあるかもしれません。それは、これまで蓄積されていたIgE抗体が一定量に達してしまったからなのです。
花粉症になりやすい人の特徴はある?
花粉症を発症する人の多くは、遺伝的にアレルギー体質を持つことが主な原因とされています。しかし、それだけが原因ではありません。他にも、さまざまな要因が影響している可能性があります。
- 食生活の変化
昔に比べ、インスタント食品やスナック菓子などの加工食品が普及した現代では、花粉症の有病率が高まっています。アレルギーの原因ともなる食品添加物や加工食品、甘いものを多く食べ過ぎると、炎症物質であるヒスタミンやロイコトリエンの放出が増え、症状が悪化しやすくなるとも。このことから、食生活を見直し、栄養バランスの取れた食事を心がけることが重要と言えます。 - 生活習慣の乱れ
睡眠不足や不規則な生活、さらにはストレスも花粉症を引き起こす要因として挙げられています。これらは自律神経を乱し、免疫バランスが崩れることでアレルギー反応を起こしやすくするためです。規則正しい生活や十分な睡眠を確保することが、花粉症の症状緩和に役立つかもしれません。 - 環境と花粉の関係
住んでいる地域の環境も大きな影響を与えます。例えば、花粉の飛散量が多い地域では、当然花粉症の有病率も高くなりますが、それに加えて排気ガスも重要な要因です。排気ガスに含まれる微粒子が花粉と混ざることで、アレルギー反応が強く出やすくなります。また、花粉が何度も舞い上がり、吸い込みやすい環境を作るアスファルトの影響もあります。一方で、土の地面が多い地域では、花粉が土に吸収されるため、空気中の花粉量が少なくなることが分かっています*³。
ビタミンDが花粉症に効く? 期待される効果
花粉症は、免疫機能が過剰に反応することが原因で起こります。そのため、免疫機能のバランスを整えることが花粉症ケアのポイントになります。ここで注目されているのがビタミンDです。
- ビタミンDの役割
ビタミンDは、免疫細胞の働きをサポートし、免疫機能が過剰にならないよう整える役割があります。ビタミンDが不足すると免疫機能が低下しやすくなることが示されており、風邪やインフルエンザの予防に役立つ可能性があるとも言われています。 - ビタミンDの主な働き
- 炎症を抑えるサポート
ビタミンDは体内の炎症反応を穏やかにする働きがあり、これがアレルギー反応の軽減につながる可能性があります。 - 粘膜の健康維持をサポート
花粉症の症状は鼻や目、のどの粘膜に花粉が付着することで始まります。ビタミンDは粘膜の新陳代謝を助け、健やかな状態を保つ手助けをする可能性があります。
- 炎症を抑えるサポート
症状が悪化する前に。早めに取り組みたいインナーケアとは?
花粉症の季節になると、「これを食べるといい」「あれは控えるべき」といった情報がたくさんありますが、何を信じてよいのか迷ってしまうこともありますよね。食事は花粉症対策の基本のひとつですが、特定の食品に偏ったり、特定の食品を完全に避けたりすると、栄養バランスが崩れがちです。
栄養が不足したり、過剰になったりすると、花粉症の症状が悪化するだけでなく、体全体の調子にも影響を及ぼす可能性があります。まずは特別な制限をするのではなく、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。
- バランスの取れた食事を基本に
花粉症対策を考えるうえで、まずは日々の食事を見直してみましょう。次のようなポイントを意識すると良いでしょう:- 主食(ご飯やパンなど)、主菜(肉・魚・豆腐などのたんぱく質)、副菜(野菜や海藻類)をバランスよく組み合わせる
- 加工食品やお菓子に偏らず、自然な食材を中心に摂る
- 腸内環境を整える工夫
花粉症と免疫は深く関係していますが、実は免疫細胞の約6~7割は腸に存在していると言われています。腸内環境が整うと免疫バランスをサポートしやすくなります。そのため、以下の食品を意識的に取り入れると良いでしょう:- 発酵食品
ヨーグルト、納豆、味噌、キムチなどは腸内の善玉菌を増やす働きが期待されます。 - 食物繊維
野菜、果物、海藻、全粒穀物などに含まれる食物繊維は、腸内の善玉菌のエサになります。
- 発酵食品
- 花粉症ケアに取り入れたい習慣
粘膜の健康を維持するには、食事から栄養素をしっかり摂ることも重要です。特に以下の栄養素に注目しましょう:- ビタミンD
魚類(サケ、サバなど)、卵黄、キノコ類に含まれます。日光を浴びることで体内でも生成されます。 - タンパク質
粘膜の材料となるタンパク質は肉類や大豆製品、乳製品などから摂取できます。 - ビタミンA
粘膜を健やかに保つ働きが期待される栄養素で、ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜に含まれます。
- ビタミンD
最後に
ビタミンDをはじめとする栄養素は、免疫機能をサポートし、粘膜の健康を保つ上で重要な役割を果たします。ただし、ビタミンDはあくまで日常生活を支える栄養素の一つであり、個々の症状や体調に応じたケアが必要です。花粉症が気になる方は、十分な睡眠や規則正しい生活、バランスの取れた食事とともに心がけると良いでしょう。
花粉症のシーズンは早くも到来。良く知り、早めの対策が肝心です!
※本記事は健康的なライフスタイルの参考情報として提供されています。具体的な症状については医師や専門家にご相談ください。
*¹ 2022_full.pdf
*² 子どもの花粉症実感、10年前32.7%→現在42.6%に増加。小学生では約半数が花粉症実感、うち32.1%「とても辛い」 | ニュース | ロート製薬株式会社
*³ 都会で花粉症が増え続ける理由とは? | くらしにプラス | エステー株式会社
(参考)
- 子どもの花粉症 “小学生の約半数に” 増加の理由は? 10年前と比べると | NHK
- 「花粉症について」:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会
- 花粉症のはなし ~原因とメカニズム~|アレジオン【エスエス製薬】
- 花粉症対策にはビタミンD!効果的な摂取方法を解説|オンライン診療サービス おうち病院
- あすけん - 花粉症が増えているのは食生活が原因?
- 花粉症にお悩みの方必見!食べ物で美味しく花粉症対策!
- 研究者の現場|JIKEI MEDIA|慈恵の医療|東京慈恵会医科大学附属病院